在職老齢年金2026:基準額が65万円に、減る人と減らない人
在職老齢年金は、老齢厚生年金を受け取りながら働いて厚生年金に加入している場合、賃金と年金の合計が一定の基準額を超えると、年金(報酬比例部分)の一部または全部が止まる仕組みです。その基準額が令和8年度から月51万円から65万円に引き上げられました。
ここでよくある誤解が二つあります。一つは「働くと年金は必ず減る」というもの、もう一つは報道で見た「62万円」と、実際に適用される「65万円」の取り違えです。まず自分が支給停止の対象なのかを、正しい数字で確認することが先です。
チェックポイント
- 基準額(賃金+年金の合計ライン)が令和8年度から月51万円→65万円に引き上げられました。
- 合計が65万円以下なら支給停止はなく、年金は全額受け取れます。
- 止まるのは老齢厚生年金の報酬比例部分だけで、老齢基礎年金(国民年金)は減りません。
- 手続きは原則不要で、支給停止額が変わると「支給額変更通知書」が届きます。
1 自分の基本月額と総報酬月額相当額を確認する
まず二つの数字を用意します。基本月額は、加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の年額を12で割った額です。総報酬月額相当額は、その月の標準報酬月額に、直近1年間の標準賞与額の合計を12で割った額を足したもの、つまり月給と賞与を月割りした額です。
正確な金額はねんきんネットや年金証書で確認できます。判定に使うのはこの二つの合計なので、賞与が多い人は月給だけで判断しないよう注意してください。

2 65万円ラインと比較して支給停止を判定する
基本月額と総報酬月額相当額を足して、令和8年度の基準額65万円と比べます。合計が65万円以下なら支給停止はなく全額支給です。超えた場合に止まるのは、超えた分の半分だけです。
止まるのは老齢厚生年金の報酬比例部分に限られ、老齢基礎年金は全額支給されます。減額イコール損とは限りません。65万円を超えても止まるのは超過分の半分なので、働いて得る賃金と年金の合計はなだらかに増える設計です。就労時間を過度に抑えると、かえって手取りが減ることがあります。
| 合計(基本月額+総報酬月額相当額) | 年金(報酬比例部分) |
|---|---|
| 65万円以下 | 全額支給(支給停止なし) |
| 65万円超 | 超えた分の半分が停止 |
| 総報酬月額相当額 ≥ 基本月額+65万円 | 報酬比例部分は全額停止 |
| いずれの場合も | 老齢基礎年金は全額支給 |
3 62万円との混同を避け、届く通知を確認する
法案が通った頃や令和7年の報道では「62万円」という数字が多く出回りました。これは以前の賃金水準で示された見込み値で、実際に令和8年度に適用される基準額は65万円です。報道の62万円を適用ラインと思い込まないでください。
なお、以前は60〜64歳に月28万円という別の低い基準がありましたが、令和4年4月の改正で65歳以上と同じ基準に統一され、その「28万円の壁」はもうありません。改正に伴う変更は自動で反映されるため手続きは原則不要で、支給停止額が変わった人には「支給額変更通知書」が届くので内容を確認しましょう。
4 よくある間違いと直し方
間違い 1
62万円と65万円を取り違えること — 62万円は報道・法案段階の古い数字で、令和8年度の適用額は65万円です。
間違い 2
毎年度の年金額改定率と、在職老齢年金の基準額を混同すること。
間違い 3
「働くと年金は必ず減る」と思い込むこと — 合計が65万円以下なら全額支給です。
間違い 4
支給停止を恐れて就労時間を過度に抑えること — 止まるのは超過分の半分で、手取りはなだらかに増えます。
FAQ よくある質問
65万円を超えたら年金は全部止まりますか?
いいえ。止まるのは超えた分の半分だけです(支給停止月額=(基本月額+総報酬月額相当額−65万円)÷2)。報酬比例部分が全額止まる場合でも、老齢基礎年金は全額支給されます。
65万円への引き上げはいつの振込から反映されますか?
令和8年4月施行で、実際の振込では令和8年4月分・5月分を含む令和8年6月15日支給分から新しい基準が反映されています。
自分で申請や手続きは必要ですか?
原則不要です。改正は自動的に反映され、支給停止額が変わった場合は「支給額変更通知書」が届きます。個別の金額はねんきんネットや年金事務所で確認できます。
要点まとめ
- 在職老齢年金の基準額が令和8年度から月51万円→65万円に引き上げられました。
- 合計が65万円以下なら支給停止はなく、超えても止まるのは超過分の半分です。
- 老齢基礎年金は対象外で減りません。手続きは原則不要です。
- 報道の「62万円」ではなく65万円が適用額。基準額は毎年度改定されるため公式で確認を。